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出遅れおじさんです。
4月19日放送の文化放送「おはよう寺ちゃん」のゲストMCPチーフストラテジスト嶋津洋樹氏が番組の中で、日銀が「金利を1%上げると、家計が潤う」と公表したレポートで言っていた、と発言され、「日銀は利上げしたいんでしょうね」と冷ややかに吐き捨てました。
(嶋津氏は紳士なので「吐き捨てる」という表現はあくまでも私の脚色ですが)
嶋津氏がコメントした日銀のレポートは、前日の4月18日に公表された、「金融システムレポート」です。
日本銀行がどういう分析の上でかくなる結論に至ったか? 気になりました。
問題の下り(?)は上記サイトの半ば辺りに下の図とともに
【引用はじめ】
家計部門においては、景気改善とそのもとでの金利上昇は、全体として、所得や利息収支の改善につながることが見込まれる。住宅ローン債務者も、激変緩和措置によって短期的な元利返済額の増加が抑制されるほか、預金など保有資産からの利息収入の増加が返済負担を部分的に相殺する
【引用終わり】
と、あります。
「景気改善とそのもとでの金利上昇」というのが極めて前提として楽観的すぎるのですがソコへの突っ込みは後述するとして、要は住宅ローンを抱えていても「激変緩和措置」のお陰で急激に利払いは増えないという前提の下で金利収支は改善されるとのことです。
激変緩和措置は一時的なものでローンの支払いはその後ずっと続くということは全く無視されています。
そもそもこの図は良くわかりません。
そもそも、金利関連収支変化の中間値を示す菱形の位置を見ると「ローンあり」の人のマイナスの方が大きいので、全体がプラスと言おうなら「ローンあり」の人は少数派?
ということで、トップに張られた本文のリンク先
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr240418a.pdf
を読んでいくと、本文33ページに出てきた図
で、漸くローンありの世帯構成比は23%と分かりました。
ついでに言うと、1%の金利上昇はローン金利も+1%、預金金利も+1%と見ているのでしょうか。
あり得ない前提ですよね。
さらに言うと、左の金融資産・負債の分布を見るとローンなしの人の金融資産は「預金」約1000万円、「その他金融資産」500万円とあるではありませんか。
政府の統計等見る限り、預金の半分規模の金融資産って「か ぶ し き」ですよね、
+1%の金利上昇で、株式の影響はどう見込まれているのか是非伺いたいと思います。
振り出しに戻って、「景気改善とそのもとでの金利上昇」という楽観的きわまりない前提条件については、マクロ経済理論ではあり得ない前提条件と言わざるを得ません。
米国が利下げできないほど高金利でも好景気というのはそれまでのコロナ以降の膨大な財政支出の効果(弊害と言っても良いと思いますが)であることを忘れてはならないと思います。
とりあえずは「激変緩和措置」でとりあえずは金利上昇でも家計が潤うとしても、そのうち失業という事態は想定し得ないのでしょうか。
しかも、この33ページの要旨は、ローンのDSR(可処分所得に対する返済額の割合)が高い世帯では債務返済能力が悪化しうることも踏まえて、大作を丁寧に実施する必要があると警鐘を鳴らしていますが、そう言う方々をケアさえしておけば全体で問題なしとするのでしょうか?
そこまでして、金利を上げたいのでしょうか。
嶋津氏に成り代わって「吐き捨て」ておきます。
有り難うございました。