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出遅れおじさんです。
【おことわり】
「モーサテ日記」は以前モーサテのキャスターをされていた佐々木明子さんの日経マネー誌の連載タイトルです。佐々木明子さんがWBSに異動されて連載タイトルが変わりましたので勝手にパクっています。
本日(6月30日)のモーサテ、「プロの眼」のゲストは東短リサーチの加藤出氏で、テーマは「超低金利長期化が招く『鈍感さ』」でした。
一週間に二度も「モーサテ日記」を上げるのも心苦しいですし、加藤氏が出演する度に記事にして批判するのも大変心苦しい次第です。
決して加藤氏に個人的怨念や因縁があるわけではないことは予め申し上げておきたいと思います。
タイトルからして容易に加藤氏の論旨は類推できます。
コロナ禍における各国の国債発行残高の推移のGDP比を比較して見せて、我が国が如何に突出して財政支出しているか・・・
と印象づけて、それが経済成長と結びついていないと言うのが下の写真の趣旨です。
でも、加藤さん!
具体的に、対GDP比の国債発行残高の増減と、GDPの成長度と人口当たりのコロナ死亡者数の比較って何の意味があります?
コロナ禍の影響を抑制しようと政府が講じた経済活動制限のレベル感と、結果としてのコロナによる犠牲者の数字はそれなりに関係があるでしょうが、それを埋め戻そうとする財政支出の規模感と経済成長は全く無関係ではないでしょうか。
我が国に関して言えば、過剰に経済活動を抑制し犠牲者を抑えたけれども、財政支出はそれを補うにはほど遠く成長率も低位に留まったというのが正しい解釈ではないでしょうか。
それ以前に、幾らGDPに対して国債の発行残高が多くても、それに匹敵する資産を保有していれば何ら問題にすべきではないですし、ましてや発行済み国債の大半を「政府の子会社」である日銀が保有している限りは「それがどうした!」という事なのですが、これまでの主張の繰り返しになりますので、これ以上は言いません。
加藤氏が後半で持ち出した、ボストン大コトリコフ教授の「財政的幼児虐待」(所謂子孫にツケを残すな理論)も我が国に関しては全く無意味と言わざるを得ません。
加藤氏はこれに飽き足らず、多額の財政支出にも効果はあったという趣旨で、主要各国のエネルギーコストの上昇指数を比較して、我が国の「多大な財政支出によって」エネルギー価格(例としてガソリン価格)は抑制されていると説明されています。
でも、加藤さん!
このグラフの解釈は著しく間違っていますよ。
まず、日米とヨーロッパ(英国&EU)とは今回のロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰のレベルが違いすぎるので比較してはいけません。
(欧州の安価なロシア産の天然ガス・原油によるボーナスが剥落しただけです)
比較すべきは日米の差なのですが、ガソリン価格に占める固定費的税負担が12%の米国と35%(何れも財務省の2021年3/四期調査結果)の上昇率が同じ筈は無いでしょう。
べらぼうに高かった日本のガソリン価格に米国のガソリン価格が追いついただけと言うのがこのグラフの正しい解釈です。
しかも、この価格の抑制は多額の財政支出の結果と加藤氏は説明していますが、これまでのガソリン価格の元売りへの補助金が如何にショボいモノであったのかはニュースを診ていれば自明です。
マスコミは数兆円規模の財政支出と今回の補正予算を批判していますが、それはこれからの話であって、ここまでに投じられた財政(グラフの成果)はごく僅かの水準です。
こじつけによって話をねじ曲げるのは止めて頂きたいと思います。
有り難うございました。